Oyashirazu

坂本 陽 / Sakamoto Minami

親不知 / Oyashirazu

2024.1.9 (tue) – 1.21 (sun)

Open 12:00 – 19:00 Closed on Mondays


北陸に親不知という海岸がある。
断崖絶壁に囲まれた厳しい地形の海岸で、昔はこの狭い海岸を通行する為には、荒波の間を駆け抜けるしかなく、北陸最大の難所と言われていた。ここで亡くなった人も少なくなかったらしい。

写真学生だった19歳の冬、海が撮りたい、と父親に言ったら、自身の出身地の近くにあるこの恐ろしげで、美しい海岸に連れて来てくれた。
ホームセンターでダサい長靴を買ってもらい、大雪の中2人で海に行った。忙しい人だったので2人きりで出かけるのは初めてな気がした。私はずっと写真を撮っていて、ふと振り返ると父親は私を見ていた。カメラを向けると凄く照れながら写真に収まってくれた。

親不知で沢山写真を撮ったが、東京に戻った後は繁華街やライブの写真を撮るのに夢中になり、あまり見返しもしなかった。1年後父親の病気が発覚して、2年後に亡くなった。写真はますます見ることが出来なくなった。

15年後の冬、Netflixのドラマを見ていたら、どうしても会いたくなったらどうしたらいいの?とヒロインが叫んで、確かに、もう会えない人にどうしても会いたくなったら、どうしたらいいんだろうと思った。

漸く見ることが出来るようになった当時のネガを見ていたら、なんとなくこの海に行けば、少しだけ父親に会えるような気がして、どうしてそんな気がするのか確かめてみようと、今度は1人で行ってみることにした。

坂本 陽

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