姜 潤 / Jun Kyo
「島へ」-Nostalgia-
2023.7.11 (tue) – 7.16 (sun)
Open 12:00 – 19:00 Closed Mondays
おとー、おかぁー。
港に近づくフェリーの甲板から声が響く。
島に近づくにつれ手を振る人達の姿が少しづつ大きくなってゆく。
父親が営んでいた会社が倒産した後大きな２階建ての我が家には赤い紙がペタペタと貼られた。
もうここを出て行かないといけないのよ と母親に連れられその家を後にしたのは僕が小学生3年生の頃だった。
父、母は母方のおばさんが貸してくれた小さな家で弁当屋を営みはじめ長姉が店の手伝いをしていた。
狭い店では家族全員は暮らせず、社会人だった二番目の姉、大学生だった三番目の姉は店の近くにアパートを借りていた。
多額の借金から逃れるために両親は偽装離婚をし、やがてそれは本当の離婚になった。すでに大人だった姉たちは結婚したり就職したりして家を離れていった。朝から晩まで働く母親。学校から帰ると誰もいない事も多く中学生から高校生まで友達が家族で家族が友達だった。
僕は在日韓国人3世として日本で生まれた。
本籍にあたる韓国の住所は、行政区画変更のため今ではもう残っていない。
家にひとり取り残されるようにして育ち故郷、家族というものを知らない僕が島で見たもの。
それは僕の記憶の中に薄らと残る家族であり故郷だったのかもしれない。
姜 潤
Special Thanks:
・Arbus photo design/藤田莉江
・写真家/中村享均
・街と人と/ヤスダ イサオ
and all my friends
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