Long Hug Town #4

水島貴大 / Mizushima Takahiro

Long Hug Town #4

2018.5.15 (tue) – 5.27 (sun)

Open 12:00 – 19:00 Closed Mondays

この町に生きる人々を包む空の上には、目には見えないとても大きな流れがあると思っていて、その流れに包まれているからこそ僕たちは生きていけて、でもときにはその流れにあらがえなくて。
その、なるようにしかならない状態を前向きにとるか後ろ向きにとらえるかは、僕らにとってなけなしの自由だと思う。

写真を撮るということは、それでも確かにお互いが生きているという限りなく当たり前なことを教えてくれる。
人間について考えて歩き回ったあげく、振り出しに戻るようなおかしさがそこにはある。

だから今日は始まりにすぎないんだってことに何度も気づかされ、何度も何度も振り向かされた。

このあいだ、町中で知り合った女の子から久しぶりに電話が来て。
「風俗で働くことにしたから、宣材写真自由に撮っていいって言われたから撮ってよ。」と言われた。
それからすぐに駅前で待ち合わせをして、飲みながら写真でも撮ろうかと思ってはしごして歩いてた。
だけどそのうちに写真を撮るのなんてめんどうになった。
このまま二人でこぼれ落ちたままでいい、そう思ったんだと思う。
真夜中に酔ったいきおいで入った証明写真機の中で、狭い椅子の上に二人で身を寄せて写真を撮った。
カシャーンとわざとらしいシャッター音が鳴って、外のポケットに写真がこぼれおちてくる。
当たり前だけど、そこには二人が写り、証明と書かれた写真が入っていた。

たぶん、こうして何度も何度も証明を続けていくことなのかもしれないと、その紙切れを見て思った。
力なく証明された数々のすがたかたちが、この町のポケットにこぼれおちてゆくだけのおとぎ話なのだと思った。
途切れてはくり返すあらがえないうねりの中で、どこにもたどりつくことはできずに、振り出しの足元で目を覚ます。
何度も何度も歩いた道を、また当たり前のように駆け抜けていくこの町の日々を、誰もあきらめることができないでいる。

水島貴大


・STAIRS PRESSより、写真集「Long Hug Town」4月下旬に発売。会期中5月19日18時より、写真集出版記念トークイベントを開催予定。」
・参加中の企画展「写真都市展 −ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち−」 が 21_21DESIGN SIGHTにて2018年6月10日まで開催中