接ぎ地 / Grafted Places

胡 揚 / Hu Yang

接ぎ地 / Grafted Places

2023.7.25 (tue) – 7.30 (sun)

Open 12:00 – 19:00

古代のエジプト文明とバビロニア文明は、埋め立ての先駆である。ナイルデルタやチグリス川沿いに堤防や桟橋を築き、川を迂回させて灌漑システムに役立てたのであった。また、世界最古の公的な埋立地事業は、13世紀のオランダの町バイムスターだと分かった。町の中心部にあった「町の湖」は、長年の泥炭採取の結果水が溜まっていたが、1609年から1612年にかけて風車によって排水された。オランダ東インド会社のインドへの長旅に必要な作物を育てるために、農民によって占拠された大面積の裸地である。日本では、天正18年(1590年)、徳川家康の江戸入府のすぐ後からはじまった埋め立て事業。特に江戸前期には、大規模な埋め立てによって、深川のような新興地もでき、江戸の町は大きく発展していった。昭和34年(1959年)、日本住宅公団初代総裁の加納久朗は「核爆発で千葉県の鋸山を爆破して埋め立て用の砂礫を入手し、晴海と富津を境界にして半分以上の東京湾を砂礫で埋め立てる」という東京湾新埋立地の建設案(構想)を提案した。東京の満たされない需要を満たすために、この建設案が提案されていたが最後には中止になった。その代替としての東京湾埋立計画は現在も続いている。
ウィリアム・ジェームズによれば「コンセプトや信念は、それが機能すれば真実である。あるいは、我々を満足させる信念は真実である」。「技術」、「ツール」としての埋立地は、昔から「ツール/技術の中立性」というような見方で捉えられてきた。この中立性が「経験」に従って、人々は技術や道具に隠された真理を考えることをやめ、自明として受け止めてきたのだ。これは危険なアプローチであった。歴史の中で、人間は「経験」に従い、数え切れないほどの埋立地を作ってきた。必要性があれば、その必要性を満たすべきであり、必要性がなければ、即座に辞めるべきなのだ。埋立地にまつわる倫理観は、いまさら論じるまでもない。公表されている埋め立て計画は高速道路を走っている車のようなもので、人間はバックミラーに映る未来を決して見ることができない。私にできることは、それを記録することだけである。

胡 揚 / Hu Yang

Profile
1997年 中国武漢生まれ
2019年 武漢工程大学卒業
2022年 東京ビジュアルアーツ写真学科在学中

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