ギャラリーメンバーの宛超凡が、昨年ニコンサロンにて開催した写真展「河はすべて知っているー荒川」で第24回(2022年度)三木淳賞を受賞しました。受賞記念展は2023年4月11日(火)~2023年4月24日(月)の間、新宿ニコンサロンにて開催されます。是非ご高覧ください。
水はあらゆる生命の源である。
また、都市が成り立ち、発展するためには、いつの時代も、水害を防いだり、水路を整備したりする治水は重要な課題だったと考える。河川は人類文明を育て、その一方で、人類は河川の有り様を度々構築し直してきた。荒川は、過去には何度も氾濫を起こし、人々の生活に大きな影響を及ぼしてきた。また、荒川の支流には、東京の“母なる川”と言われる隅田川もあり、荒川を下っていくことで、東京という都市の、様々な側面が見えてくると考えた。
これが、荒川を被写体として選んだ理由である。
そして、荒川を下ることで見えてきたのは、都市の一つの側面だけではなかった。自然に対する人間の力も、まざまざと見せつけられた。荒川が、現在のような流域にあるのは、人間の力の介入があったからこそ、ではないだろうか。川にはいろんな水が注いでいる。工業排水や生活排水、そして雨水などだ。人々は、川で泳いだり、川辺で釣りをしたり、あるいは、川の上を船で走る。また、水面をゴミが漂い、死んだ魚が川辺に打ち捨てられている光景も見た。
宛超凡
川に注いだ水の成分の違いにより、川の両岸の人類社会や自然環境は異なる。川はそれらの全てを知っている。また、川はすべてを受け入れ、流れ続けている。
これが『川はすべて知っている』というタイトルを付けた理由だ。
本年度の三木淳賞の選考は、受賞対象となる作品のレベルが拮抗していて、かなり難航した。結果的に受賞に至ったのは、宛超凡さんの力作「河はすべてを知っている──荒川」だった。中国河北省生まれの宛さんは、2013年に来日し、明治大学や東京藝術大学の大学院で学んだ。その後も、日本で写真家としての活動を続け、いくつかの公募展で入賞を重ねている。このところ、中国出身の若手写真家たちの活躍が目立つが、彼もその有力な一人といえるだろう。
選評・飯沢 耕太郎
2022年11月のニコンサロンでの展示のテーマは、埼玉県と東京都を流れる荒川だった。巨大都市・東京を貫いて東京湾に注ぐ荒川流域を隈なく撮影することで、「東京という都市の、様々な側面」を浮かび上がらせることをめざした。特徴的なのは、6×18センチ判のパノラマサイズのカメラを使ったことである。そのことによって、源流から河口へと川筋を辿っていく視覚的経験を、客観的かつ細やかに提示することができた。同時に刊行された、横長の判型に、紙をつなぎ合わせた経師本形式で写真図版をおさめた写真集(STAIRS PRESS刊)も、素晴らしい出来栄えだった。
宛さんは次のプランとして、中国の上海を流れる黄浦江を撮影する予定だという。三木淳賞の受賞によって、荒川/東京と黄浦江/上海とを対比させる、スケールの大きな写真シリーズが実現することを期待したい。