広瀬耕平 / Hirose Kouhei
土を織る / Weave the soil
2017.3.14 (tue) – 3.26 (sun)
Open 12:00 – 19:00 Closed Mondays
ある日、ある時、戻る場所を失い見知らぬ土地へと移り住んだ。その土地は昼も夜も明るく、孤独がひしめき合いながらも煌びやかで、まるで異世界のような景観だった。あの時は誰も知らない場へ行きたい、ただそれだけしか頭になかった。その無機質な土地は常に人々が建造物の合間を流れるように歩き、足早にどこかへと向かっている。ぬたり、ぬたりと現れては消える光景は、まるで忘れようとしている土地で見た水の流れを見ているような感覚になったのを今でも忘れない。そして、光に飽和した私の眼にはそこは真暗に見えていた。
月日が流れ、私は失った場所へ戻り足元を見続けた。土は湿り気を帯びながら足にからみつき、引き込むように私を放さなかった。そして水を塞き止め、合間を縫うように流れていた。これはかつて知らぬ地へ移り住んだ時に見た光景となんら変わらないことがわかった。
その時、私自身も土へと納めされ、地の一部になっていたのかもしれない。
広瀬耕平