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下平竜矢 / Shimohira Tatsuya
Family
2009.11.10(tue) - 11.22(sun) |
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じきの出産に備え、兄の嫁は張りに張ったお腹を抱え入院した。 蝉の声は日を追うごとに増え、季節は春から夏へと移り変わるさなかだった。 そして入院してから一週間後の出産当日、私は兄嫁が陣痛の痛みに耐える姿を目の前で見ていたが、 何も出来ずにただぼんやりと椅子に座っていた。その時ふと私は何故か、実家の近くにある小さな森 の事を思い出していた。 この季節は繁殖期をむかえた蛍が森の中で光り始めるので、今時分は見物客もぱらぱらいるはずだが、 普段の夜は街灯もなく人もいない静まり返った森だけがそこにあった。
私は数年前のそんな夜の森の中を、夜ごと歩いていた事があった。 それは、森の奥を「子宮」森全体を「胎内」と仮定し、外をまさに「外界」として行きつ戻りつ繰り 返し歩き、さながら疑似再生の様な作業を、手探りの中で毎夜の様に続けていた。 しかし、それを始めてから数ヶ月たったある日の夜、森の奥に突然現れ、ふらふらと近づいてきた季 節外れの蛍の光によって外へと導き出された私の命に、私の内なる光を思ったのだった。そしてそこ で私は数ヶ月に及んだ歩みに一区切りをつけ、それ以後は振り子のように外へと向かっていった。
そう、思えば人間の命というものは本来は光そのものであり、何をしようが何をしなくても、太陽の 様に産まれたての姪の様に、そこにいるものを明るく照らし出すものなのだ。だからこそ私は、光を 遠くに見ながら歩むのではなく自分自身が光となり、目の前の道を明るく照らしながら歩いて行きた いと思っている。 |
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family ゼラチンシルバープリント ed.10 |
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